映画「ペイフォワード」から見る相続の本質

中学1年の社会の時間、シモネット先生は生徒に課題を出しました。
「もし君たちが世界を変えたいと思ったら何をする?」
トレーバー少年はペイ・フォワードという造語を考え出しました。他人の恩や、思いやり、善意などを受けた事に対して、それをもらった相手に返報する代りに、自分が選んだ別の相手に厚意で報いるという意味。3人に出来ればその3人がまた3人にする。すると9人になる。こうして社会が変わるのでは無いかと少年は考えました。

ペイ・フォワード「可能の王国」という映画です。

この映画は「相(すがた)は続いていくこと」を教えてくれました。少年の目の前では失敗の連続。彼はこう言う。「結果は失敗だった。」しかし一つの石が池中に波紋を広げるように少年の知らないところでこの運動は広がっていきます。ホームレスの青年から母、祖母、街のチンピラ、一流の弁護士、そして青年レポーターへと。ラスベガスからロサンゼルス・サンフランシスコへと。これが大きなムーブメントに広がっていきました。たとえトレーバー少年の姿が見えなくなったとしても……。
橋から飛び降りそうな女性を身を挺して救おうとするホームレスの男。「なぜそこまでして他人の私を助けるの?」ヤク中のホームレスの男は答える。「ペイ・フォワードなんです。」

「相続とは相(すがた)を続けること。」
両親の、目にみえない考え方、人間性、生きがい、大切にしているもの、背中、後ろ姿、等を配偶者、子供達が続けること。目にみえる物は目に見えない物を続けていくための基盤。

国民教育者の父といわれる、森信三先生曰く、「不滅の精神を確立した人だけが、この肉のからだの朽ち去った後にも、その精神はなお永遠に生きて、多くの人々の心に火を点ずる事が出来るでしょう(修身教授録299ページ致知出版社)」。まさに目にみえる物は無くなるが、目にみえない精神は無くなるどころか広がっていきます。

一人の少年のペイ・フォワードという志が周りの人を変え、そして社会を変えていく。相(すがた)は間違いなく続いていく。相続税の専門家として、森先生の言葉を思い出させてくれるような素敵な映画に出会えた事を嬉しく思いました。
記:天野隆。240。